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メール・マガジン
「FNサービス 問題解決おたすけマン」
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★第094号 ’01−06−08★
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乱暴な話
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●「脱・大量生産の工場改革」
というNHKスペシャルは<山陰最大の企業>鳥取三洋電機の話で、
そのナレーション。 「経営陣は3千人の雇用を守る戦いの全権を
山田さんに託したのです」 おやまあ、何と乱暴な、、 それ、
ゴーン氏をCOOに迎え入れた時の日産自動車・塙社長が「みんな
お任せしちゃいました」と他人事のように言った(第37号)のと
全くソックリ。 つまり三洋さんも「他責の文化だった、、」?
<経営陣>てのは、より良い状況を実現するために色々知恵を出す
のが専門、、 だろうに、外部の誰かさんに託す?
<山田さん>は天下のトヨタのご出身、天下のソニーやキャノンで
実績をお持ち。 となると、お安くはないでしょうな。 その先生
へのお支払い、もちろん経営陣の給料から拠出なさるんでしょうな。
え? 別途? そりゃ乱暴じゃ? え? それが<日本的>?
*
サーモスタット屋当時、鳥取には<電熱>、<電器>、<機器>の
3工場があり、我々は初め、電熱事業部の御用達でした。
電熱とはたとえば、ニクロム線に電気を流せば赤熱する、という熱。
究極の初歩的原理ですから、それに基づく商品も、それに取り組む
人々も単純。 ほかに工夫するところが無ければ、赴く先は価格
の競争。 尤もそれは家電一般の傾向でしたが、
松下さんとは親類の井植さんが張り合って、マネシタさんのさらに
マネをする傾向。 どこかアレンジして似たようなものを作っては
売る。 が、最後は値段で勝負! その影響だろう、納入業者には
もっぱら「安かろう」で迫る、、
という、愉快でない条件が二重の相手ですから覚悟してはいました
が、まあ、色々ありました。 でも、<業者>にだけ無茶を言うの
ではなく、相手が社内の人々であっても、やはり乱暴なんですな。
<改革>だから敢えてそうしたのか、それとも社風なのか? 番組
の本題は「常識の壁をうち破れ」でしたが、その点は昔からすでに
<常識の壁をうち破>っていましたよ。
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●<改革>のために招いたのが
<工場再建屋>と言われる人。 もう死に体、の認識? ともかく、
自力では改革できないらしい。 作ったが積んだまま、何年と動か
ない商品が倉庫に山。 それを百も承知で、何ともせずに来た人々、、
知恵が無いわけじゃない、ただ毎日作るのに忙しくて、考える方に
時間が割けなかっただけ、、かも。 効率あれど効果なし。 それ、
マネジメントじゃありませんな。 とにかく、
社長以下、最敬礼で山田先生を出迎える。 自分たちには無い知恵
が<外部の専門家>にはある、と信じて疑わぬ人々の異様な雰囲気。
そう安易に期待するのって、乱暴じゃないかな?
*
先生が第一に踏み込んだのは、出荷倉庫。 狙いは? 私がその
立場だったら、、 と考えたが、ワカラン。 すると先生、後に
ついて回る幹部社員の中から、特に事業部長名指しで質問。
「今日、トラックは何便出るのか?」 事業部長詰まる。
すると先生、「今日の売り上げが掴めていないようじゃダメ。
出荷してナンボでしょうが、、」とグサリ。 作り方の改革なのに、
ここでこんな質問、乱暴だぜ、、かどうか、事業部長、引きつって
いましたな。
オープニング・パンチ1発!は、講師やコンサルタントの常套手段。
見事咬ませたあとは、首尾良く先生のペース。
作業場へ立ち入るや、「こりゃオイシイラインだな、、」、「久し
ぶりにオイシイムダを見た、、」。 オイシイ? 舌なめずり?
* *
何のためか広い部屋に管理職一同が集合、リーダーのかけ声のもと、
砲丸投げの構え。 胸に抱え込んで勢いを溜めた拳を、エイと突き
上げて叫ぶ、「今日こそオレはヤルぞー!」。 つまり昨日までは
ヤラナカッタ、自覚しているわけ? で、今日ヤルのは何ですか?
それも決めずに「ヤルぞー!」とは乱暴。 先生は今回、見て取る
だけ。 次回は1週間後、ですぜ。 結局あなた方は、今日<も>
大したこと、なさらんでしょうよ、、、 それにしても、
気になるのは、実年齢の高さ、あるいは雰囲気が<若く>ないこと。
その表情は「ヤルぞー!」と裏腹。 その部屋、鏡を貼りましょう
よ。 ココロ抜き、形だけ、がよく分かるぜ。
* * *
次は組み立て作業場のラジオ体操風景。 おや、女性たちも<若く
ない>んだ。 生産品目が(昔は)ステレオ、ファクス、(今は)
DVD、携帯電話などハイテク製品だから、、 若い人も、と予想
したのだが、外れました。
作業服らしくない事務服的制服。 働きにくかろうに、そんなのを
着せるのでもないと人が集まらない、かな? 年齢のせいか服の
せいか、力のこもらない体操ぶり、、 これも形だけ。 社風?
工場内がやや閑散なのは、86年にはマレーシア、94年には中国、
すでにラインの一部が移転しているからかも。 本年、三洋全社
で6千人リストラするそうだから、若い人など採るはずも無い。
しかし、家計を助ける<一生懸命>母さんたちではある。 マイク
に向かって、「(会社が)いなくなると生活が苦しくなる、、」、
「行かれちゃ困る、、」、「無いといけない会社、、」と交々。
その切実感、もっと早く、まず経営陣が持つべきだった。 海外へ
生産を移し始めた時から、早晩「いなくなる」運命だったんだから。
**********
●今回の改革
の重点は<仕掛品>の由。 商品寿命が突然尽き、不測の売れ行き
不振に陥る。 で、ストップをかけるが、工程中の仕掛り分までは
製品になってしまい、例の<山>に加わる、、
結果的作りすぎ。 しかも、次製品へのライン改造には数週間を
要する。 単能的、故に硬直的。 それを時代のニーズに適うよう、
山田先生が直して下さる、、 ということらしいが、、
*
1週間後の第2回目、先生の計画が実行に移される。 それが何と
「経営陣にすら知らされることなく、、」だから乱暴きわまる、、
白ヘルに軍手の解体チームが現われ、30年使っていたコンベアを
いきなり壊し始める。 すっ飛んで来た製造課長、「何なの?!」。
唖然、呆然の様子が、「知らされることなく」の証明でした。
とは言うが、NHK取材班はそこにいた、、 ということは、
例によってヤラセかな? こりゃクサイぞ。
コンベアに代わる案は<一人屋台生産方式>。 必要全部品を作業
者の周りに立体的に配置した、<一貫組み立て単独作業台>方式。
単能的分業ではラインに着く人数が多く、それぞれが仕掛品を抱え
込む。 多能工の単独一貫式だと仕掛品が減り、作業は刺激的に
なり、「今までのままならみんな中国へ行ってしまう」(山田氏)
のを防ぐことが出来る、、 はずなのだが、
多能工化訓練の並行で、現場は大混乱。 訓練や試運転も無しとは
乱暴ですな。 当然、生産性は落ち、納期が守れそうもなくなる。
製造課は改革に逆うことを承知でラインを元に戻し、当座の対応を
図る、、 乱暴のお返しと言うべく、工場改革チームには断り無し。
翌朝それを知って驚いた改革チームは、製造課長を会議に呼び込み、
<モデルライン>を設けて多能工化推進の実験を行なうという結論。
考え方の順序が逆様、<常識をうち破>ってるねえ、、
6人分がかりだった作業を一人でこなすL字型屋台。 入社20年
のベテランが選ばれてこれに挑む。
ラインのペースメーカーでもある彼女、さすがでした。 たちまち提案、また提案。 5日目
には6人式の効率をしのぎ、疑っていた製造課長をも納得させた。
あのタイプの人、有り難いことに、いてくれるのです。 92号に
書いた「賢い樵や農夫は、、」の例。 改革チームも管理職たちも、
彼女にこそ「キオツケー! 礼!」すべきなのだ。
山田先生の一言:「能力を伸ばす管理でなく、止める管理だった」
つまり、マネジメントじゃなかったんですな。 阪神では
<新庄>だった男が、メッツヘ行けば<シンジョー!>、、
改革チーム主任:「もっと早くやっていれば良かった、、」
「やれ」と言われなかったから、、 第3象限第2傾向の人。
(第54号参照)
* *
その1ヶ月後開かれた<懇親会>も、乱暴でした。 前記主任の
挨拶と来たら高校野球<選手宣誓>風、ガンバリマース! M的!
ベテラン彼女も「皆さんがガンバッテおられるのをヒシヒシと感じ、、
明日からさらに気持ちを引き締めてガンバロウと、、」 M的!
言われりゃ誰だってガンバル。 言われなくても状況に迫られれば、
みなガンバル。 いずれ日本海の彼方の人々もそうするだろうから、
ただガンバルで差をつけることは難しい。
これで何とかなりそうだ、と思う安易な精神構造はそのまま、当座
の暫定策と言うべき屋台式が緒に着いたくらいでカンゲキしている。
何か間違ってるんじゃないかな? の違和感。 そもそも
工程間在庫が作りすぎの元凶みたいに言うのがオカシイ。 それも
所定生産数の一部、その元は販売予測や生産計画。 元が正しく
なければ、屋台式だろうと結局は余る、、 とは思わないものか?
大局に着眼せず、小局に着手するのでは不調和や不適合が生じます、
と<状況分析:SA>の意義を強調してやまない講師の目で見ると、
鳥取三洋さんは
Rational Process にも<オイシイお客さん>、、
* * *
製造課長は3月(遅い!)、中国を訪れて見学。 「新生産方式で
付加価値を高めるほか無い、、」の感想。 おいおい、新方式の
意義は工程間在庫の削減だぜ。 付加価値? そんなもん無いよ。
また3月末、ファクスの生産が中国から戻され、それを屋台方式で、
となって6人の女性が取り組む。 取材者の「答え、見付かります
か?」に製造課長、女性たちを振り返りつつ「答え、出してくれる
んじゃないですか」 ほら、またひと任せ。 乱暴だなあ、、
「不況と過酷な国際競争の中で雇用を守り、MADE IN JAPAN を作り
続けるために、知恵と工夫と働く意欲で、一人一人の新しい戦いが
始まっている」とナレーションは結ぶのだが、この解釈も乱暴だな。
人材の質がひどく低下している当今、作業者が意欲旺盛であること
を要求する屋台式作業に耐えられる後継者が得られるのか、大いに
疑問です。 また、その方が良いとなれば、大陸でも屋台化はすぐ
始まるに違いない。 乾杯なんかしている場合じゃなかろうに、、
* * * *
近頃流行りのセーフ・ガードとやらも、所詮はかない抵抗。 往年、
アメリカもガードして我々に意地悪したが、大して成功しなかった。
まして、ハイテク労働集約産業に発動されるはずもない。
<一生懸命ガンバル>で対抗し続けるつもりなら、まず競争相手と
同じ生活水準に落とし、相手以上に勤勉に働く必要がある。 だが、
生活の間口は狭められないし、労働時間はアメリカより短い。 ま、
勝ち目は無さそうです。
アタマを使えば、、 と言いたいが、それが機能していたら、この
ルポにもならなかったはず。 アタマは<三洋>にあり、鳥取は
<手足>、即ち本質的に、海外工場と同じ関係位置の存在。 急に
アタマを使えと言う方が乱暴なんだよ、、 で、どうしたものか?
これまで<コントロール>だけで来た鳥取の<管理>者たちだから、
まず<マネジメント>の<考え方>に切り換えてもらうことが必要。
(第11〜13号参照)
「これっきゃない!」、「ヤルッキャナイ!」から、「何のやり方
も一つじゃないよ」、「色々ある中から最適のを選ぼう、限りなく
補強をかけようよ」へ、の切り換え、、 なら、やはり
RationalProcess で、とするのが早道でしょうな。
**********
ついでながら、
こんな次元の話に<スペシャル>と銘打つNHK、かなり遅れた人
たちの集団のようですな。 これでジャーナリズムやってるつもり
なら、、 それもやはり、乱暴な話ではあるまいか?
■竹島元一■
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